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犬神家の一族・・・の謎 [推理小説]

映画にしろ、原作にしろ、納得できないのが殺人の動機

三姉妹の長女、松子が息子の佐清(すけきよ)に相続させるために、なぜ人殺しまでしたのか?・・・ということに対する十分な動機が語られていないと思う。

まず、若林を買収して遺言状を見た松子が、珠世を殺そうとする。

・寝室に蝮(マムシ)を放り込む

・自動車のブレーキに細工する

・ボートに穴を開ける

そして、三度ともこの殺人計画は失敗しているのだ。まあ、三度目は金田一の登場で失敗するのだが、それにしてもお粗末。後に3人の血縁者(半甥)を無残に殺した松子の所業とは思えない有様なのだ。

さらに、その後は珠世殺しをやめて、甥殺しに計画を変更したことも不可解だ。松子自身が告白しているように、松子は完全犯罪(偽装工作)を目指してはいない。逮捕されてもいいと思って行動しているのだから、失敗するのはおかしいし、珠世殺しをあきらめるのもおかしい。事実、最初に殺された若林も、片想いの相手である珠世に被害が及ぶことを恐れて金田一に調査を依頼したのだ。だが、珠世を殺しても、財産は5分の1しか相続されないのだから、本編はその発端自体が矛盾しているのだ。(ただし、事業だけは佐清が相続する)

最後の告白で、松子は遺言状の写しを見て、珠世憎しの一念が燃え上がって、珠世殺しを決意したとあるが、大事な遺言状を終わりまでよく読まなかったなどという設定は、あまりにも苦しい[ふらふら]

次に、(偽)佐清の復員の後は、珠世殺しをあっさり放棄して、甥たちを殺していく。 

珠世と佐清がお互いに好いた間柄であったことは、母である松子は当然知っていた。ならば珠世は当然、佐清を選ぶのだから、松子としては婿候補の佐武・佐智を殺す必要もなかったはずである。ただ、偽佐清が戦争で無残な顔になってしまったから、珠世に拒否されることを恐れた。ということで、甥殺しに走る・・・というシナリオになる。

これを発端に、映画の名文句となった、(すべは偶然の産物でした)につながっていくのだが、原文は

『そうでした。偶然でした。恐ろしい偶然でした。恐ろしい偶然が何度も何度も重なってきたのでした。』となっている。

だが、だとしたら、なおさら不確定要素である珠世を殺すべきだったように思う。(その場合は、5文の2が静馬に相続される。)松子の告白では、佐清を迎えにいく汽車の中で、遺言状をよく読み返しているうちに、珠世殺しをあきらめた・・・とある。

やはり、苦しいシナリオである。もっとも、そのあたりをいい加減にしないと、この小説は成り立たないんだよなぁ・・・。


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たいちさん

原作との比較、面白く読ませていただきました。
by たいちさん (2010-08-23 13:31) 

降龍十八掌

たいちさん、ありがとうございます。
たまたまテレビで見た勢いで、研究してしまいました。原作とビデオを何度も見て追求したので、10倍楽しめました。

犬神佐兵衛の人間性を原作者はどう考えていたのか、研究してみたいです。


by 降龍十八掌 (2010-08-23 21:58) 

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