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オリエント急行~を徹底的に読む [ミステリ]

著作権って何年なんですかね。流石に100年もないとは思うのですが・・・。⇒条約によると著作者の死後50年というのが一般的なようなので、ポアロやマープルシリーズが無料の電子図書になるのはまだちょっと先かな? (アガサは1976年死亡)

原作を読みたかったのですが、紀伊国屋の洋書コーナーはかなり縮小された子供だましで、めぼしい洋書ほとんど何もありませんでした。(意外やドラゴンタトゥーのペイパーバックがたくさん置いてありました!)ただ、県立図書館に行って検索したらかなり昔の文庫本があったので借りてきました。倉元推理文庫で初版は1959年!訳も(ハヤアワ文庫の新刷と比べると)かなり古いです!でも、ハヤカワ文庫は一冊900円近いので、ちょっと手が出ません。

ポーター⇒赤帽、スタンブール=スタンブール、ベオクラグラード⇒ベグラード、ミネラルウォーター⇒鉱水、などなど。

まずドラマとの違いは、冒頭の中東での事件。

犯人は現地を統括するフランス軍の高官であり、その対処に苦慮した上層部(将軍)がポアロに解決を依頼したものであった。その詳細は語られること無く、ただ高官が自殺し、もう一人が辞職したという記述のみでした。見送りの下士官には、いったい何が起こったかは知らされていないんですね。つまり、暗黙のうちに処理された。確かに、フランス軍の将軍なら、ベルギー人のポワロと親しかったというのも納得できる設定です。ドラマは吹き替えだったので、わかりませんが英国軍内の事件だったように見えました。

しかも犯人は高官でなく、若い中尉の起こしたケチな事件でした。見送りの下士官が控えめな抗議をし、ポアロがそれに反論する場面がありました。さらに、現地で姦淫した女性が石で打たれ、リンチされる場面も追加されていますが、これも原作にはなし。ですから、最後のシーンでもあっけらかんと犯人を見逃してやるというハッピーエンドが本当の話で、この点では映画の方が原作どおりといえる。

結局、最初と最後の演出(正義に対する考え方)はドラマ独自の創作でした。まあ、昔のオールスターキャストの映画との違いを出したかったんでしょうが、原作に忠実なポアロを目指したかった・・・というD・スーシェ版ドラマのコンセプトに反すると思います。

イスラムらしき不倫妊娠女性が石で殺される場面をミス・デベナムが目撃するという場面もなく、原作において、ポアロがミス・デベナムとアーバスノット大佐を最初に見たのは、アレッポ駅(シリア)からハイダルパシャ駅へ向かう(寝台)列車の中での出来事でした。二人の意味深な会話を聞いたのも、列車が途中停車した駅のプラットフォームでのこと。

その後、ボスフォラス海峡を船で渡り(当時は橋がなかったんでしょうね)、イスタンブールのヨーロッパ側に渡る。

オリエント急行では、最初、ポアロは席が取れずに二等寝台(二段ベッドの相部屋)に乗ることになる。ホテルのフロントでは、こんな季節(冬)ですからガラガラですよ・・・と言われていたのだが。実は、このセリフが最初の布石なのだが、ドラマではなぜかカットされている。因みに、座席を融通してくれた鉄道会社重役のブークはベルギー人で、ポアロの古馴染みだったとの設定。

気になるのは、一人だけ予約客(A.M.ハリスという英国人)が乗り遅れたこと。ダミーだったのかな?(⇒最後に、ダミーだったことがわかる。重要な役を演じるはずのマックインーンの同室に他人を乗せたくなかった)。しかし、その架空の人物が来なかったおかげでポアロはその寝台に乗ることになる(マックイーンと相部屋=ニ等車両の7号)。翌日、ベオグラード(ユーゴスラビア、今のセルビアの首都)で、アテネからの連結車両があり、ポアロは一等寝台の個室に移ることになる。だから、初日の夜には計画を実行できなかった。(もっとも、計画は当初から二日目の夜であったらしいのだが。・・・トラブルを避けるために死体が発見されるのは文化圏のイタリア当たりにするはずだった。)

一等寝台の1号(個室)は本来は重役のブークの部屋だったが、カレーまで行くポアロのためにブークが譲ってくれる。ブーク自身はアテネから来た車両に移る。なお、一等寝台は食堂車の次の車両である。

被害者のラチェットは、ポアロの隣部屋=2号(個室)で殺される。

12時30分。積雪により停止。原作では、ドラマのようなハデな衝突シーンはなし。

12時37分。(ちょうど、1時23分前・・・と訳されているが、どこが丁度なのだろうか?[ふらふら])ポアロが叫び声で目を覚ます。ベルが鳴り、隣の部屋に車掌(ミシェル)が行くが、中から例のフランス語の返事がある。

寝付かれないポアロは、隣室(2号)の洗面台の上げ下げする音、水を流す音、ラチェットの歩き回る音を聞いた。また廊下でスリッパを引きずる音を聞いた。だが、あまりに静かなことを不審に思う。列車は雪により停車していたのだった。時計は1時15分となっていた。

ポアロが廊下を覗くと、呼び出しベルが鳴る。3号個室のハバート夫人だ。車掌に、部屋の内部に男がいたと言い張る。その後、ポアロは車掌にミネラルウオーターを頼み、それを飲む。だが、今度はドアをガタンとする音がしたので、再び外をのぞくと例の赤い着物の女の後ろ姿を見る。女は食堂車の方に向かっていた。

今度はぐっすりと寝て、ポアロが起きたのは午前9時過ぎ。

ドラマではギリシャ人医師(しかも産科医)のコンスタンチンが犯人一味で、ポアロをミスリードしようとしていましたが、原作ではむしろ逆でした。ちゃんと、『雪に足跡がないから、この窓を開けたのはダミーだ。』『この傷は左利きでないと不自然だ。』など、いろんな指摘をしていましたし、単に医師とかしかありません。因みに、この医師の名前はイスタンブールの旧名(ビザンチン、つまり後のコンスタンチノポリス)からとっていますね。原作では、ハードマンというアメリカ人私立探偵の乗客がいたのですが、彼をカットしてかわりに13番目の協力者という形で強引に医師をもってきたものです。

さて、ドラマでは説明されなかった犯人一味の一人がフランス語で返事した謎ですが、これはラチェットがフランス語を話せないということがバレルこを見越したたうえで、その時間(=12時37分)には既にラチェットは謎の男に殺されていた・・・と思わせるためのトリックだったと分かりました。実際には、そのときはまだ眠り薬で眠らされていた状態であり、犯行はずっと後の時間(=午前2時近く)だったということのようです。

だが、だとすると、ポワロを目を覚ますことになった叫び声は何だったのか?

ドラマでは、ラチェット氏をナイフで生殺しにした時の苦悶の叫びでしたが、原作では、誰かがトリックのために叫んだということになっています。(但し、証拠はない)

そうそう、肝心のヘレナ(伯爵夫人)とリンダ・アーデン(女優、ヘレナの母)の姓はゴールデンベルグであり、ウォーターストーン(ワッシャースタイン)ではありません。なんで、ドラマでは苗字を変更したのか分かりません。そもそも、醜いロシア公爵夫人が彼女たちの姓を偽って英語に言い換えたというのは原作にはありません。彼女の旧姓はちゃんとパスポートに載っており、ポアロもリンダ・アーデンの本名を記憶してんですよ。だから、この当たり下りは映画の創作のようです。ですが推理ドラマでは、とてもいい場面なのでドラマもそれを踏襲したのでしょう。おそらく映画でも、ウォーターストーンだったのかな?ゴールデンベルグじゃせいぜいゴールドバーグにしかならないので、言い換えの意味がないからな・・・。


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