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忘られぬ死①~アガサ・クリスティ [ミステリ]

忘られぬ死(原題はSparkling Cyanide 煌めく青酸カリ) 

ポアロもマープルも登場しないアガサ中期の秀作。

見るドラマがないので、夕べから読み始めた。いち早く、真相をつきとめられるか?

登場人物 

アイリス・マール(女) まだ21歳になっていない。

ジョージ・バートン(男) アイリスの義兄。自殺した姉ローズマリーの夫。15歳年上。

ルース・レシング(女) ジョージの有能な秘書。 

ルシーラ・ドレイク(女) アイリスの父方の伯母。

アンソニー・ブラウン(男) 死んだローズマリーの友人。

スティーブン・ファラデー(男) 死んだローズマリーの友人。有望な若手政治家。

アレクサンドラ・ファラデー(女) スティーブンの妻。

 

第一篇 ローズマリー

 1 アイリス・マール

  1

 アイリスは1年前に自殺した6歳上の姉ローズマリーのことを務めて思い出さないようにしていた。姉の検死審問の後、いまわしい出来事は全て忘れてしまうのがよいと思っていた。だが、夕べ義兄(死んだ姉の夫)に思いがけず会い、彼が机の引き出しから取り出した手紙を見せられたことで思い出さないわけにいかなくなった。最近のジョージは、ふさぎがちで、上の空で行動もなぞめいている。そうなる前兆が何がなかったか?だから、今は全てを思い出さねばならない。

思えば、アイリスは姉のことを客観的に考えたことはなかった。

アイリスが幼いころ、6歳年上の姉は机に向かって『お勉強』していた。歳が離れていたために、姉が寄宿舎(※イギリスでは伝統的に寄宿学校に入れる慣習がある)に入ってるころは休暇にしか会わなかったし、逆に自分が学生のときには、姉はパリで花嫁修業というありさまだった。そしてそれ以降も、二人はあまり顔を合わせることがなかったのだ。パリから戻った姉は見違えるように美しく、艶やかになっていた。

姉が家に戻った後も、自分は家庭教師つきの規則正しい生活、一方姉は社交界にデビューし、夜のパーティ、朝は寝坊というすれ違いの生活であった。二人姉妹のつきあいといえば、ごくわずかな言葉のやりとりに過ぎなかった。

 それにしても、姉はなぜ15歳も年上で、退屈なジョージ・バートンと結婚したのだろうか?姉の周りにはたくさんの男性がいたはずだ。義兄のジョージ自体も金持ちだったが、姉はお金目当で結婚したわけではない。なぜなら、姉にはそれ以上の財産があったからだ。

 姉の名づけ親であった、亡き母の友人(恋人?)であるポール・ベネットの遺言で、ローズマリーは彼の相続人となっていたからだ。優しい『ポールおじさん』の財産をローズマリーが相続したのは13歳の時であった。

今でもアイリスは姉はジョージと結婚して不幸せだったとは思っていないが、彼を愛していたとはどうしても思えないのであった。二人はアイリスが16歳の時に結婚した。一年後に母ヴィオラ・マールが死に、アイリスは姉夫婦と一緒に住むようになった(エルヴェストン・スクウェア)。

母は姉のローズマリーばかりに気持ちをそそいでいた。学校、家庭教師まかせではあったが、体の許す限り、姉のことには手をかけた。だが、そんなことをアイリスを不満に思ったことはなかった。ローズマリーこそが大切な子供であるという事実を、彼女はなんのこだわりもなく受け止めていた。二人の父親、ヘクター・マールはアイリスが5歳の時に死んだ。かなりの酒飲みで体を害したのだった。

姉夫婦の家で、アイリスはフランス語・ドイツ語・家政学の勉強に明け暮れた。社交界へのデビューは1年間待たされることになった。義兄のジョージは本当の兄のように優しくしてくれた。だが、姉は留守がちでほとんど顔を合わせることがなかった。

こうして考えてみる、一体自分は姉について何を知っていたのだろうか?と思わざるを得ない。しかし、今は思い出してみねばならない!そしてそれはとても重要なことかもしれない。

確かにローズマリーは一見、幸せそうに見えた。あの日・・・あれが起こる一週間前までは。

あの日のことは決して忘れないだろう。一週間ほどのインフルエンザあけの姉ローズマリーの居間に入ると、姉がテーブルの上にうつぶせてすすり泣いていたのだった。姉が出た後、テーブルを見ると手紙があった。

   かわいいアイリス 

      どっちみっち、私のお金はあなたにいくのですから・・・

一体、姉は死ぬつもりだったのだろうか?さて、姉の財産のことだが、本来であれば夫である義兄のジョージにいくはずだ。だが、姉の財産はポールおじさん(もちろん、本当の伯父ではない)のものだから、あらかじめポールおじさんの意思で、姉が死んだ場合は姉の子供に、子供がいなければ妹のアイリスが相続するということになっていたのだった。アイリスはそのことを、そのときに初めて知った。ただ、確かになぜポールおじさんの財産が全て姉のものになったのかは不思議であった。二人とも師妹なのだから平等に分けられてもよかったはずだ。

アイリスは手紙をそのままにしておくべきか考えたが、結局、その便箋を二つ折りにしてテーブルの引き出しにしまった。

検死審問では、インフルエンザ後のうつ状態による自殺という結論となった。だって当時は、それ以外の動機を見出すことはできなかったのだから。

だが、今、あの屋根裏部屋での出来事を思い起こしてみると、なんと自分が物事にうとかったのかと不思議でならない。姉はなぜ、誕生パーティで死んだのだろうか? 

姉の葬儀の後、弁護士は故ポール・ベネットの意思により、ローズマリーの財産は全て妹のアイリスのものになるべく委託されているということを説明した。それはアイリスが21歳になるか、結婚した時に相続されるという条件であった。今後の身のふりかたとして、アイリスは義兄の家にそのまま居り、父方の伯母であるルシーラ・ドレイクに来てもらうことにした。彼女には、金をせびるドラ息子がいた。半年後、アイリスは屋根裏部屋である発見をすることになる!

トランクの中の化粧着のポケットの中から見つけた手紙。それは姉から『愛しい豹(レパード)』に宛てたラブ・レターであった。中身は『豹』からの突然の別れ話に姉が動転しているものであった。

アイリスは姉のことを全く知らなかったことに愕然とする。それにしても、この『豹』とは一体誰なのか?思い当たる男性は、スティーブン・ファラデーとアンソニー・ブラウン。アイリスはこの手紙を、自分の宝石箱にしっかりとしまった。    

姉が死んだ後いなくなっていたアンソニーが再び姿を現したのは、手紙を発見した一週間後であった。ローズマリーが死んだのが11月。翌年の6月、パーティでアイリスはアンソニーに再会する。旅に出ていたという彼と、その後アイリスは週に一度は会うことになる。だが、およそのんきであった義兄のジョージが『アンソニーという男はいったいどうゆう男なんだい?』と詮索するようになったのだ。

ルシーラ伯母のドラ息子、ヴィクター・ドレイクから200ポンドの無心がくる。ジョージはルシーラの株を売ったふりをして50ポンドを立て替えて送金する。

義兄の態度が不自然になったとは一体、何時ごろからだったか?やがてジョージは完全に心配事を抱えた、やつれた表情をするようになった。義兄はアイリスに、ローズマリーに敵はいなかったか?と尋ねてきた。さらに、政治家のスティーブンとその妻アレクサンドラのことを尋ねるようになった。

6月の月末、ジョージョは突然サセックスの田舎に別荘を購入する。だが、その目的はスティーブン・ファラデー一家とご近所さんになるのが目的だったと判明する。8月から9月まで、一家は郊外で暮らし、ファラデー一家と親交を深めた。ジョージは毎晩、酔ったような表情をしていた。アレクサンドラ夫人は如才なく立ち回っていたが、その本心はつかめなかった。10月になり、一家はロンドンへ戻る。

以上が物語りの導入部。

私の推理

ローズマリーの本当の父親はポールおじさんではないのか?それを苦にして、父親は酒びたりなっていたのではないか?

『愛しい豹(レパード)』が男性とは限らない。もしかして女だったかも?

  


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